米国ニューハンプシャー大から出ている「経済不況後の出生率の低下」というレポートを読みました。これは2007年から2009年まで続いた大不況(リーマンショックからの流れ)の中、米国の出生率が急激に低下したというものです。
そして、その不況から10年後、不況前の水準まで回復しているかを調査した結果、出生率が回復していないどころか、出生率の低下を加速させているという結果になっています。
米国では過去70年間、女性の労働参加率の上昇に伴い、1950年には女性は労働力の29.6%に過ぎませんでしたが、2017年では、女性が労働力の46.9%を占めています。この変化は、米国の出生率に大きな影響を与え、経済状況が共働き世帯にシフトしたことで、多くの大人が子供を育てる時間を確保できなくなり、さらに、賃金の伸び悩みも、子どもの数を減らしたいという流れに拍車をかけました。実質賃金は停滞し、購買力も著しく低下し、子育て費用の増大が相まって、子どもを持つ余裕のある家庭はますます困難になっているとあります。
米国では、子どもを持つという欲求は依然として高いけれども、子どもを育てる経済的な余裕がないため、経済状況が改善されれば、出生率の上昇につながる可能性があるとありました。
経済不況時における出生率の低下はよくあることとしながら、この度の経済状況の改善に伴って出生率が回復しなかったのは米国でも初めてのケースだそうで、様々な社会的・政策的要因に加えての経済的不平等が拡大していることが原因としています。
出生率が低下した理由を探るために、さらなるサーベイとしてどのようなタイプの女性が子供を産まなくなったか、農村部と都市部の母親では、子どもの数を減らしたり、子育てを完全にあきらめたりする傾向があるのか?女性が産む子どもの数に教育はどのような影響を与えるのか?さまざまな指標がさらに必要で、子どもを持つ機会を得られるような条件を整える、効果的な政策を生み出すことができるかもしれないとしています。
翻って日本。経済格差による出生率の低下という面においては、米国の後を追いかけています。
出生率の低さは近年に突然やってきたのではありません。
少子化の原因には様々な要因が考えられるでしょうが、単に晩産や晩婚なんて話で片付けられる話ではありません。
日本の文化を踏まえた日本独自の少子化対策が必要なのではないでしょうか。
出典元:University of New Hampshire
THE BABY BREAK: AN ANALYSIS OF SUSTAINED FERTILITY DECLINE AFTER A PERIOD OF ECONOMIC RECESSION
(経済不況期以降の持続的な少子化の分析)