女性活用は少子化に歯止めをかけられるのか?

企業経営には女性社員の活躍なくしては成り立たない時代となり「女性活用」というキーワードのもとで、各企業がさまざまな制度改革を行っています。

目次

女性活用が目的になってはいないか?

企業経営者に取材すると、「女性活躍」に対する解釈はさまざまでした。

「国の指導に従って女性活躍推進をミッションとしているが、一定数の割合の女性を管理者にしなければならない。」と、どこか嘆いていることに違和感がありました。

数合わせで男女の差別なく、女性社員にも管理職キャリアのコースを用意した、あとは「実力でどうぞ」では、必ずどこかで躓くのではないでしょうか。

子を産むというライフステージにおいて、残念ながら女性は、何歳になっても産むことができるというわけにはいきません。また、キャリアが成熟した頃、女性ホルモンにより女性特有の不調が多くの女性に訪れます。この「ひとりひとりの女性特有の健康課題への自覚、そして会社の理解なしに」企業の成長も少子化に歯止めをかけることも難しいのではないでしょうか。
キャリアを優先し、晩婚化・晩産化が進行し、キャリアを積んだとしても女性ホルモンの不調により戦線離脱になるだけです。

企業のさまざまな取り組み


ある中小企業のオフィスマネジメント・コンサルティング業を生業とする経営者に「女性活躍」の施策についての話を聞きました。

入社4年目のインテリアデザインチームに所属する、ある若手女性社員が退職の意向を口にしたそうです。

「仕事にやりがいはあるが、時間に振り回される生活から結婚→出産→育児に対する未来が描けない。」

当時のキャリアパスとしては、ディレクション職としてプロジェクトをリードしていくという「爆走コース」しか用意されていませんでした。例えやりがいは得られても、忙しすぎる中で不安が生まれます。

キャリアとライフプランを天秤にかけたときに女性であれば誰もが悩むテーマ。

そこで経営者は、臨時的にもうひとつ、時間制限を強化した「快走コース」として新たなサポート職を加え、選択できるようにしました。この選択により、ひとりの有能な社員の離職に歯止めをかけることができました。

また、この新たなコースは、選択のひとつとしてブラッシュアップされ、ほどなく職種として制度化されました。

この制度の導入から2年半の間で、50名規模の企業の中で、1割以上の女性社員がその制度をうまく利用し、結婚や出産など、ベビーブーム到来に繋がったとのことです。

しかし、経営者によるとこの制度導入は、

「ジェンダーに関係なく多様性の時代にマッチしたひとりひとりの「人財」としての価値を生む」ことが本質で、強い組織をつくるためのものであると、きっぱりと明言していました。
そして働く「当事者」にとってプラスとなる選択肢を企業としてアップデートし続けているそうです。

伊藤忠商事の調査によれば、社内の出生率は、2010年0.94%に比較して2021年度には、1.97%に急上昇しました。
見直したのは「女性のために導入した」ではなくて「全社で導入した」朝型勤務のフレックス制度。
朝型勤務はエンドレスに成りがちな夜残業とは異なり始業の前までなので終わりが決まります。子育て中のお迎えや対応にも朝型は人気です。一部SNS等で社員の合計特殊出生率をKPIとしたことに対して圧力だ、というコメントも見かけましたが、スタートして10年かけて制度を見直し、アップデートしながら出た結果です。

このように各企業が自社の成長や業績アップのためにさまざまな施策を行う中で、もう一点、健康経営と密接につながる課題があります。

それは女性特有の健康課題です。

国の法整備と啓発の両輪で

菅前首相の肝いりの政策であった不妊治療の保険適用が、2022年4月から開始されました。

制度として不妊治療をサポートする大きな一歩ではありますが、不妊治療へのリテラシーが低い日本社会では、保険適用の制度の正しい理解がまだまだ足りません。
女性が子を産むことができる時期はどうしても決まってきます。女性が自分自身のカラダを知ること、信頼できる婦人科領域の、かかりつけ医を持つことが大切です。

健康経営とフェムテック

企業の中でも、健康経営の一環でフェムテックが注目を浴びています。

生理や女性ホルモンにまつわる女性特有の疾患についてのセミナーやオンライン診断ができる福利厚生サービスを導入しているところが少しずつではありますが、増えてきました。

プレコンセプションケアというワードが漸く日本でも聞かれるようになってきましたが、企業や個人が性や女性の健康に関する知識を身につけ、学びや理解を得ることは非常に重要です。

そして、企業が人財を生かし、個人がキャリアとライフプランの両立するためには、ハード面の法制度のみならず、ソフト面として啓発をすすめる、この両輪があってこそ、本質的な少子化に歯止めをかけることができるのではないでしょうか。

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