2021年1月13日TIMESに、興味深い記事を見つけました。タイトルは、”医師の予想に反して、コロナ禍パンデミック時に卵子を凍結する女性が増えている” というものでした。
パンデミック発生した時期は、どの不妊治療クリニックも不況に備えたそうです。なぜならば、ウイルスへの感染や、そもそも医療費の高額な米国では、解雇や一時解雇を余儀なくされる可能性のある人々が、よもやリスクのある時期に新しい命を生み出そうとすることは医療機関も、想像できなかったからです。
しかしながら、米国主要都市の54 のクリニックでは、卵子凍結のために訪れる女性の数が年々増加し、その中には解雇された女性もいました。医療施設が、パンデミックによる景気後退を予想したのにも関わらず、来院する女性たちは大幅に増加したそうです。
東海岸で 36 の診療所を運営する Shady Grove Fertility では、2019 年以降、卵子を凍結している女性が 50% 増加していました。メンタルヘルスの担当者が興味深い示唆をしていました。働く多くの女性たちにとって、コロナによる外出禁止が、図らずも、自分の人生の価値とは?優先順位とは?と女性が自分の家族計画において熟考することになったのです。
当然この2年強、動きを止めざるを得なかった間も時は止まってくれません、誰もが年齢を重ねます。年齢が若いほど子を産むには条件は良く、健康な卵を採卵できる可能性が高いと考えたのでしょう。
今は、すっかりビジネスも再開して人々の交流は回復していますが、日本の社会だったらどうだったでしょうか?結婚や恋人のいないシングルで、解雇された、あるいは解雇されるかもしれないという社会不安の中で卵子凍結を決断する女性は果たして居たでしょうか?
米国では、すっかり卵子凍結はトレンドのようで、生殖能力を低下させる可能性のある化学療法中や、子宮内膜症の女性、はたまた疾患に関係なく、子供を産む準備ができていないが20歳代の若年層など、2009 年にはわずか 475 人だった卵子を凍結した女性は2018 年には、13,275 人となり、何と2,695% 増加したそうです。
米国企業では、福利厚生の一部として卵子凍結をサポートする企業も少なくないようです。日本でも卵子凍結をサポートする企業が少しずつ増えていますが、ライフプランとキャリアの両立が難しい日本においては、朗報のようにも思えますが、メリットとデメリットを理解する必要があります。同時に欧米諸国と異なり、生殖に対する啓発が著しく遅れている日本で、システムだけを先んじて導入することに危惧を抱きます。
以前、菅前首相が、これからの日本社会は、自助、共助、公助とおっしゃっていました。不妊治療の保険適用は、制度として不妊治療をサポートする大きな一歩でした。しかし不妊治療へのリテラシーが低い日本社会では、医師任せという人がほとんどでしょう。医師もいろいろ、治療方針もいろいろ。そしてカラダはひとりひとり違います。制度を正しく理解し、自身のカラダのコンディションを知り、信頼できる医師との取り組みが大切です。
プレコンセプションケアというワードが日本にも聞かれるようになってきました。
性や健康に関する知識を身につけることは、キャリアとプライベートの両立を組み立てることにつながります。早急に啓発を広げることが少子化に歯止めをかけることができる、と考えています。