リプロダクティブヘルスについて考える

リプロダクティブヘルス/ライツは「性と生殖に関する健康と権利」で、WHOや国連で提唱されています。ふと日本で提唱されいる「リプロダクティブヘルス」のどこにも「性」の言葉がなく、元をたどってみました。英語表記はSexual and Reproductive Health and Rights(セクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ)とされており、頭文字をとって、「SRHR」と呼ばれています。
今から30年近く前に1994年カイロで国際人口開発会議で全てのカップルと個人が自分たちの子どもの数や出産間隔、出産する時期について自由に責任を持って決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本概念が定義されました。

医療機関や医療教育の間では普及している用語ですが、30年経っても我々の生活の中において、この用語を知ってる人は非常に少なく、女性の人権であるということが認識されていないこと、女性活躍や少子化対策といった経済用語に変換されて本質が伝わっていないような気がします。

弊サイトでもリプロダクティブヘルスの定義について説明していますが、私自身も改めてこの言葉の生まれた背景や概念を改めて確認した次第です。

日本では、リプロダクティブヘルスという通称になっており、セクシュアルヘルスライツが明記されていません。

1994年に定義された頃、日本は1989年頃からHIVがまん延し始めていました。折しもバブル期でもあり、世界行動計画策定の段階でピルが性行動を乱れさせ、HIVをまん延させると危惧(1991年~1993年の急上昇)して敢えて言葉を削ったことが想像できます。その他の諸外国においても宗教上や民族上で性行動に踏み込むことを拒否した国も少なくはないでしょう。
厚労省のデータ

しかし当時仮にそうだったとしても、時代と共に社会も変わっていきます。

社会が性の問題にどう向き合い、どう国民に伝えていくか啓発活動が先進国の中でも日本が遥かに遅れているのは言うまでもありません。日本がいつまでも性教育=セックスという一面でしかないネガティブな考えを持ち、本質的な生命の知識や教育と向き合わなかったこの数十年で若年層の性行為感染症や、性犯罪、セクシャルハラスメント、子殺しなどが増え社会問題になっています。多様性の社会とどう向き合うかという問題も、性意識やジェンダー意識に肯定的な変化をもたらし、エンパワメントするには、この定義と改めて向き合う必要があると思います。

個人の権利を守ることの本質的には社会的な変革や整備がベースになければいけません。直接的ではないかもしれませんが、今の晩婚や晩産、生理のしくみ、カラダに対する無関心や知識のなさも関係しているのではないかと考えています。

リプロダクティブヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味します。男女とも自らが選択し、安全かつ効果的で、経済的にも無理のない受け入れやすい家族計画。法に反しない他の出生調節の方法についての情報を取得し、方法論を利用する権利、女性が安全に妊娠・出産し、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケアサービスを利用できる権利があります。

単に生殖と性感染症に関連するカウンセリングとケアではなく、また女性活躍のための権利ではありません。

少子化対策にしても、フランスのシラク大統領の3原則(1.経済的不安を生じさせない2.無料の保育所の完備3.育児休暇から3年後に職場復帰も3年間ずっと勤務していたとしての企業の受け入れ)の取り組みに日本が学ぶことはもちろんの事、家族計画に対する幼少期からの啓発、いのちの教育などもっと本質的な取り組みをしてほしいと願います。
 

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