女性アスリートは自分のカラダと闘っている

生理のある女性アスリートは、そのパフォーマンスをあげるためにいつも悩んでいます。サラ・クラウチさんはアメリカの長距離ランナーですが、週に140マイルも走るトップアスリートとして、食事やトレーニングのちょっとした変化がパフォーマンスに影響を与えることを知っていました。2010年代初頭結婚を目前にしていた彼女でしたが、まだ子供は欲しくなかったため、さまざまな避妊方法がランナーに与える影響をネット検索したところ、避妊の方法や避妊具がアスリートのパフォーマンスへの影響についての研究はほとんどなかったとのこと。32歳だった彼女はFB経由でトップランナーの女性たちにメッセージを送ったのですが、同じようなフラストレーションを抱えるアスリートがほかにもたくさんいたそうです。ピルがカラダやタイムにどのような影響を与えるのか、あくまで個人個人の試行錯誤を頼りにしていました。女性は生理周期がありパフォーマンスに顕著な影響を与える可能性があります。ホルモンレベルの変動が、筋力の低下や痛み、蓄積エネルギー、靭帯断裂のリスク、体感温度の上昇に関連していることがわかっています。

元ボート競技のキャスリーン・アッカーマンさんは先駆的な女性アスリート・プログラムを設立しさまざまな研究者と情報共有を行っています。先のサラさんが語ったように、アメリカでさえ、避妊と運動能力の関係についての研究はまだまだ断片的で、しばしばアスリートではない対象に行われる場合もあり、時には矛盾する結果を生み出しています。このようなパフォーマンスのデータは、例えばオフィスビルの温度設定は平均的な男性の安静時の代謝率に基づいて開発されていて、女性の代謝率ははるかに低いにもかかわらず、その結果、女性にとってオフィスは平均5度寒すぎるとアッカーマンさんは語っています。(アメリカでさえも)男性を中心とした世界を設計する中スポーツ医学に関しても同様だと言います。皮肉なことに、男性が女性よりも多く研究されてきた主な理由の1つは、生理周期の複雑さによるもので、データをとるには男性の方が簡単で「女性を研究するのはお金がかかるため」避けられていたそうです。

アメリカでさえも、女性アスリートに対する生理やホルモンとパフォーマンス研究が遅れていることに驚きましたが、ピルの影響は民族、競技の種類、(筋肉の種類)などによってもさまざまな結果がでる可能性もあり、研究が進むことを願うと共に今後もアッカーマンさんの研究をウォッチしていくつもりです。

出典元:GLOBAL SPORT MATTERS(アリゾナ州立大学グローバルスポーツ研究所)

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